視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感、普段何気なく使っている自分の感覚を意識すると、新たな発見があるかもしれません。
感覚が人間らしさを取り戻すカギ
私たち人間を含む動物は、外部環境を知るために多くの感覚機能を使っています。この感覚機能を大きく5つに分類したものが「五感」と呼ばれ、この分類の仕方は古代ギリシアのアリストテレスが起源とされており、古くから使われている分類法です。世界をどう「見ている(視覚という意味ではなく)」のかという言い方もできるかもしれません。
人間は五感の中で、視覚を一番使っており、割合は8割以上と言われています。同じ生き物でも、犬は嗅覚がすぐれていますし、猫は聴覚を主に使っているそうです。ですから、同じ環境にいても、人間と犬が知っている情報には違いがありますし、人間と猫が見ている世界は全く違うものかもしれません。さらに言えば、同じ人間同士でも、同じ感覚を持っているとは限りません。先ほどの「視覚が8割以上」という話も、目の見えない人が「見ている」ものは、視覚を使っている人とは違うことが想像できます。
皆さんは、現代人は感覚が鈍くなってきているという話を聞いたことはありませんか?最初にお伝えしている通り、五感は動物が外部環境からどう情報を仕入れているかを意味しています。今、私たちの生活は、多くの情報が飛び交い、視覚に頼るスタイルになっています。すると、常に視覚から情報を取り入れようとします。目を酷使すると視覚は疲労し回復しづらくなります。そして、視覚ばかり使うことで、他の感覚は鈍くなってしまうのです。五感が正常に機能しなくなってくると、体や心の安定も崩れがちになります。感覚は使わなくなれば衰えていきます。その状態が長く続くと、正常なバランスに戻すことが難しくなってきます。もちろん、目から入る情報は人間にとってもともと大切な感覚ではありますが、それ以外の感覚も必要な感覚です。使う割合がどうというよりは、私たち人間が本来持っている感覚をきちんと使うことが自然にできなくなっていることが大きな問題ではないでしょうか。
まずは、日々の生活の中で、視覚以外の感覚を意識してみましょう。例えば耳から入ってくる情報に意識を向けてみる、触れる感覚を大切にしてみる、食事に集中することで味覚と嗅覚も反応します。視覚は、目をつぶらない限り入ってくる情報ですので、あまり意識しなくてもよいでしょう。ここで間違ってはいけないのは「なんとなく感じる」のではなく、「感じる」自分をさらに感じることです。テレビを見ながら食べるご飯ではなく、目の前にある食事を楽しむ、それが重要です。
また、自然が作り出す風景や風や太陽の光を感じる時間を作ることも、とても大切です。この週末はぜひ自然の中に自分を置いてみてください。そこから感じるものは、きっと皆さんの心と体を健康にしてくれるはずです。