赤ちゃんが、他の赤ちゃんの泣き声を聞いて泣き始めた。そんな場面に出会ったことはありませんか?感情・気持ちは、自分だけでなく他人に伝わっているんです!
脳は他人のまねをしようとする
発達心理学では、感情が他人に伝わることを「情動伝染(emotional contagion:感染と訳している場合もあり)」と言います。「情動」とは感情・気持ちのことですが、どちらかというと急速に引き起こされた一時的な感情のことをあらわします。
この情動伝染を考えるうえで外せないのが、脳の働きです。私たちの脳内には「ニューロン」という神経細胞があります。このニューロンは、体を動かしたり、考えたりするときに反応しています。そのニューロンの中に、自分が動いているわけではないのに、他人の行動を見て、その動きを自分が経験しているかのように反応している部分があることが1990年代に発見されました。これが「ミラーニューロン」です。
あくびをしている人を見ると、自分もあくびが出てしまう、これはミラーニューロンの働きによるものだといわれています。このミラーニューロンは、共感細胞や共感脳とも呼ばれ、他人の行動だけでなく、意図や感情を読み取って、反応することがわかってきています。
笑顔の人といると、自分まで笑顔になる。イライラしている人と一緒にいると、自分もイライラしてしまう。泣いている人を見ると、自分も悲しくなってくる。これらは脳が反応して、無意識のうちに相手の感情を自分も同じように感じているということなのです。
理由がわからない感情に気づく
ネガティブな感情は、ポジティブな感情よりも、伝染する力が強いといわれています。ここで注意したいのは、情動伝染で伝わってくる感情は、「つられて」出てきているということです。よくよく考えると、どうしてイライラしているのかわからない、そんなことはありませんか?本来は自分の感情ではないのに、脳の働きで、あたかも自分が感じているように勘違いしている状態かもしれません。
もし、理由はないのにイライラするとか悲しい気持ちになる場合には、前述のミラーニューロンが、他人の感情をまねている可能性があります。その時は「自分がイライラしているのではなく、他人のイライラがうつったんだ」と自分に語り掛けてみましょう。
また、運動をしたり、日光浴をしたり、自分自身が行動をしてみてください。笑顔を作ってみたり、ポジティブな言葉を使うのもいいかもしれません。するとスイッチが切り替わり、自分自身に意識が向くようになります。自分が感じているものは、本当に自分の感情か?と、考えることが大切です。
自分自身が原因ではないストレスのことを「セカンドハンド・ストレス」と言います。これは、情動伝染によるストレスであり、避けることが難しいストレスであるといわれています。怒りっぽい上司、機嫌の悪い部下、イライラしている満員電車の乗客たち、テレビやインターネット上からも私たちは影響を受けてしまいます。ネガティブな感情が伝わるということは、ポジティブな感情も同様に伝わります。相手の感情の影響はもちろん、自分自身も感情の源であることを意識して、良い感情を発信していきましょう。