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シリーズ【企業と共育】Vol.1 価値観を育む経営のトライアングル(安並潤さま)後編

この記事は、企業の人材育成の現状を伝えるシリーズ【企業と共育】Vol.1。井関産業の安並潤さんのインタビューの後編になります。

前編はこちら

シリーズ『企業と共育』Vol.1後編フロント.png

ー 『経営のトライアングル』とても興味深いです。たしかに自分の価値観を明確にするということは、仕事をする上でも、生きていく上でも、とてもパワフルなことだと思います。安並さんは弊社の研修にも受講されていますが、弊社の教育コンテンツに限らず、どういった基準で、研修のような外部の教育を受けられているのですか。

選ぶ基準は、先程の話とも関係しますが、やっぱり「その研修に健やかな価値観を育むプロセスが入っているかどうか」です。ぼくはあんまりノウハウやテクニックだけを教えるところには行かせたくないです。どんなに素晴らしいノウハウやテクニックを持っていてもそれを使うのは、人間なので、その人間が素晴らしい人間性を持ってないと、効果的に使えない。この考えも、ぼくの中では、生産性を考えたときに出てくる思考です。

ー 生産性とリンクして考えるのはとても興味深いです。では、そもそもどうして、自社での教育だけでなく、外部の研修をご自身で受けたり、社員のみなさんを送り出したりするようになったのでしょうか。

ぼくが社長になったときに、色々な事件がありました。半年かけて次々と社員さんが辞めていったんですね。元々、縁故で社員を雇っていたので、社員の友達が社員、という具合だったので、一人が辞めるとズルズルっと芋づる式に辞めるという流れがありました。もちろん社内の雰囲気も悪くて、次は誰が辞めるのか、と疑心暗鬼になっていました。それが耐えきれなくて、根本的に採用を変えようと、新卒採用に切り替えました。そのときに、ちゃんと価値観を分かち合えるような社員さんを自社でしっかり育てられる仕組みを導入しようと思いました。けれど、ぼくには、その経験がなかったので、そのときに初めて研修を利用しました。そこからだんだんと自分や会社と向き合うようになり、自分で勉強しながら、新しく入った社員さんたちにも参加してもらい、会社の価値観と自分たちの価値観がしっかりと同じ方向を向くようにしていきました。

ー 自社で価値観を共有し、同じ方向を向く。そのためにも、自身と向き合うことを安並さんはとても大切にされている印象を受けます。社内育成に関しては、どのようにされているのでしょうか。

隔月で、会社員の層を半分に分けて社内育成は行ってます。幹部の人たちの教育は「立志塾」という名で、人間性を高めたり、志を立てたりする教育が多いです。一般社員の方を対象にしたものは、まず会社の状況や仕事についてしっかり知ってもらうために、「希望塾」と言って、マーケティングなどを学んでもらいます。どちらにも共通するのは、自分と向き合う、ということを必ず行ってもらっていることです。

それ以外にも、全体が集まった「未来プロジェクト」というものを行ってます。これは、各部隊が現状を報告し、問題点を出し合って、みんなで議論して、フィードバックをする場です。

ー 未来プロジェクト、名前を聴いただけでワクワクしますね!他にも、井関産業さんならではの教育と言いますか、価値観を共有するイベントなどはありますか。

イベントと言うわけではないのですが、方針勉強会というものがあります。これは毎月一回、朝の時間を使って、ぼくが作った経営計画書の方針について社員さんと対話します。例えば、今日は、購買の方針について、とか。一方的な話し合いにならないように、どう思うかや、どう実行するかなどざっくばらんに話し合いをします。そして、一年を通して、薄いものですが、みんなで読み通します。これがそうです。

井関産業手帳.jpg

ー すごいですね、これ!井関産業さんの虎の巻ですね。しかも薄い方が短くて頭に入りますし、エッセンスもギュッと詰まっているので効果も高そうです。本当にその方針勉強会で、あらためて会社の価値観をみなさんにお伝えしてるんですね。通常の業務の中で、人材教育に関して意識的に行っていることはありますか。

うちには営業部隊が3つあるんですが、それぞれが自分たちの枠の中でやらないように、お互いにプロジェクトベースで連携させるということもやっています。

ー それは面白いですね。営業部隊間で、移籍するみたいなこともあるということですか。

全く違う業界の商材を部隊ごとに扱っているので、移籍のように、ずっと違うところに移動するということはないです。各々の部隊が違うところにずっといるからこそ、移動させたいという想いはありますが、まだそういう文化ではありませんでした。最近ようやく部門をまたがって、事業部をまたがってプロジェクトをするんだという流れが出来てきました。

ー 縦割りではなく、横割りでという感じでしょうか。

そうです。そのためにあるテーマやプロジェクトが出てくると、「この部隊とこの部隊でチームを組んでやってください」というような形で、常に管理部門も含めて横で連携をとれるような状況をあえて作ろうとしています。

ー それ自体が、また社員のみなさんに新しい刺激や発想、学びを与えるキッカケになりそうですね。

違う文化やルールで働く人と一緒に仕事するからこそ、どう適応するかを考えたり、自分と向き合ったり、それこそ自分の価値観を見つめ直したりすると思ってます。だから、違うタイプの人と仕事をする。多様なものを見て感じるという機会を、社内外問わず提供していけたらと思っています。

まず会社としては、部門を越えた連携を当たり前のものとしていきたい。そして将来的には、社員みんなのタイプや価値観をしっかり把握して、その人が最大限伸びるようなプロジェクトの組み方や、働き方、育て方を提供していきたいです。

また、評価やフィードバックも、従来の営業のような一人一担当で行うものではなく、チームやプロジェクトでできるようにしたい。そうすることで、どんどん新しいプロジェクトや事業が、会社のいたるところから生まれるような仕組みを、これから社員のみなさんと一緒につくっていきます。