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【連載:企業と共育】Vol.2 過疎地域にあっても「いい会社」!前編(セキハツオートワークス・関一憲さま)

願いの数だけ企業があり、会社の数だけ人の育て方はある。

企業を訪ねて人材教育の現状を伝えるシリーズ【企業と共育】
時代の変化を肌で感じる激動の今だからこそ、企業と人が共に育つあり方を探求します。

第二回は、セキハツオートワークス代表取締役社長の関一憲さん。

人口減少が社会問題となって久しい現在、いかに企業が地域に対して貢献し、また地域からも愛される企業になるのか、そのヒントを知りました。

インタビューを行った場所は、セキハツオートワークス千葉県大多喜町。人口減少の真っ只中の地域です!

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ー 今日はお忙しい中、インタビューを引き受けていただきありがとうございます。

いえ、こちらこそ大多喜町までお越しいただいてありがとうございます。東京からだと遠かったでしょう。

— 高速バスで2時間くらい…。思った以上遠かったですし、正直なところ、田舎でびっくりしました。

そうでしょう。大多喜町は、5つの村が合併してできた町なので、通常の市町村より、面積は大きいのですが、人口が9千人ちょっとなんです。しかも、街全体でひと月で生まれるお子さんの数が2人とか3人。これから毎年200人ずつぐらい減っていくような地域です。元々は2万人程いた町だったんですけど。

—すごい勢いで人口減少が進んでいるんですね。そういった地域で会社を経営されるのはどうしてなのでしょうか。しかも、セキハツオートワークスさんは、商業圏を大多喜町とその近隣だけに限定してるそうですが、それはなぜなのでしょうか?

なぜ…?それは、ここが私の郷里ですし、私は3代目なので。祖父がこの土地で、エンジンや発動機を修理・販売する会社をつくったのが始まりです。社名に、「ハツ」がついてるのは、その名残です。実際には、大多喜町とその周辺。車で3、40分圏内が市場です。私たちは、代々この地にお世話になってますし、支えていただいているという想いがベースにあります。たしかに、過疎地域、僻地と呼ばれるところかもしれない。当然、市場性とか経済合理性とかを考えると、市場という視点からすると、ここでない方が良いかもしれない。けれど、僕にとって、大多喜町は特別な場所だし、うちの会社にとっても特別な場所です。市場とかの手前には「恩」とか「ご縁」とかがあると思っていて、そういうのが、僕にとっては大切なんです。

ー 「ご縁」や「恩」のある土地に根ざしてビジネスをする。それはとても美しいと思うのですが、実際にやり通すのは、とても難しいのではないかと思います。いったいどういった手を打っていこうと考えているのでしょうか。

たしかに厳しい市場ではあるんですけども、現在、弊社にリピーターとして来ていただいている人の割合は、市場全体シェアの25%程度なんです。逆に言うと、75%ぐらいは、この狭いマーケットの中ででも、まだまだうちのお客様でない人がいらっしゃるので、今後は地域内シェアをいかに上げるか、にかかっています。

客数は変わらず、マーケットは縮小するかもしれない。けれど、うちの会社の社員さんの行動とか一生懸命さとか、そういうサービス全体を総合評価してもらって、「やっぱりセキハツがいいよね」って言ってくれるお客様が、仮に人口が半分になってもシェアが倍になれば、お客様の総数は変わらないじゃないですか。

ー 現状のマーケットそのものが小さくなっていく。お話を聞いていて、ふと思ったんですが、他の競合他社さんは、そのような状況を受けて、他に移るであったり、大きな市場で勝負するというようなことが過去にありましたか。

そういうことを行う業者さんも企業さんももちろんあるけども、そこまでする体力が残っている会社はそうそうないでしょうね。この人口減少が今に始まったわけではなくて、私が24年前に継いだ時には、すでに人口減少エリアで、過疎地域でした。商売を潰さないように生き残るために、これまでに色々なことをみなさんやってきたと思います。

ー この市場そのもののプレーヤーがどんどん減っていく…。

そうですね、同業者も減るでしょう。

— そうなる現実があるからこそ、いかにリピーターを増やすかというのは、サバイバルするためにも必須条件ということですか。

必須ですね、はい。

ー 最終的に、自動車販売や整備といった自動車関連の業者は、大多喜町にセキハツオートワークスの1社だけしかない、みたいな状態は考えていますか。

独占する気は毛頭ないです。やっぱり健全な競争というのはとても大事なので、独占するという発想はうちにはないんですけども、やはりこの地域の中では、一目を置かれる会社にはなっていたいし、それが100年とか200年企業になるための大きな足掛かりになるんじゃないのかな、とは思います。

もちろんそうは言っても、成長することに対しては、非常に難しい地域なんです。成長というのは規模の成長のことです。会社規模としての成長が、非常に難しいエリアなので、今後は、セキハツの想いや技術、サービスの質を今の社員さんにしっかり伝えられる教育をした上で、彼ら彼女らが多店舗展開をするという構想も持っています。

— 多店舗展開ですか?

はい。違うエリアに出ていく。活躍の場を広げる、という意味で、僕の中でイメージが出来ています。セキハツオートワークスが、なぜこの大多喜町に絞ってサービスを展開しているかというと、この土地が僕にとって特別なエリアだからなんですね。それだけです。しかし、社員さんは他のエリアからも来ています。彼ら彼女らにもそれぞれに想いがあって、特別な場所というのがある。そういったことも踏まえて、マーケットの状況や、社員さんの未来とかを考えると、この大多喜町を本拠地としながらも、それぞれの大事な場所で店舗を展開できるようにしたい。また、そういった視点をもつと、今の大多喜町やセキハツの可能性がどんどん見えてくるんです。たとえば、大多喜町って、エリアとしては、千葉県の中心部にあるんです。

IMG_3010-911000-edited.jpgー たしかに。

房総半島に行くということで、ここに来る道中、もっと海が見えるのかなと思っていました。しかし、バスはどんどん山を越えていったので、やっぱり来てみないと分からないなと思ったのですが、大多喜町が中心にあるということに、どんな可能性があるのでしょうか。

そうなんですよ。房総半島。特に、ここは南房総というエリアになりますが、大多喜町からいろんなところに行きやすいんです。近隣の市町村や、高速道路で遠方へのアクセスも良い。そこに、他店舗展開と、セキハツが「車」を扱うということを一緒に考えると、いろいろ見えてきませんか。

ー なるほど。なにか繋がったイメージがあります。今関さんが話していた「行きやすい」というのは、「車」が前提ですよね。線路も空港もありませんし。南房総は、車で移動しなければいけない地域。つまり、車に限定すると、この大多喜町という町がハブになって、しかも、そのハブに自動車関連サービスを提供するセキハツオートワークスがあり、そこを拠点に南房総で他店舗展開するのは、いろんな面で可能性がある、ということですか。

そうです。そういうことです。車が絶対必要な地域。その中心地で、自動車関連で圧倒的な質のサービスを提供し続けて喜んでもらうことが、大事だと思ってます。それは、今後の多店舗展開にも、大多喜町内でのシャアを増やす上でも、絶対にやり続けなければいけないことですし、僕がそうしたい。

後編へ続く)