やる気を起こす人材育成とは!の後編です。(前編はこちら。)前編の最後に「人に影響を与える人ほど、まずは自分の発する言葉に注意を払い、互いが共に成長し合う質の高いコミュニケーションを取っていきましょう」と書きました。ここから引き続き“ほめる”という視点から考えてみたいと思います。
ほめる基準を持つ
ほめ方にもいろいろありますが、ほめる際に皆様の中で基準はあるでしょうか。もし、自分の中で基準を作っているのであれば、あらためて基準を見直すことをおすすめします。
というのも、その基準が人材育成につながっているかが重要な鍵になるからです。私は3つの基準で、ほめる(承認する)ようにしています。
①日頃の姿勢や、目的に対する意識をほめる。
その人が物事をどうとらえているか、どんな言葉をつかっているか、どんな思考でいるかを見ましょう。普段のふるまいには、その人の本質があらわれます。例えば、問題や課題に直面したときにどんな反応をしているか、そしてその中でも、仕事の意味や価値を見失わずに、熱意を持ってひた向きに取り組む誠実な姿勢を承認します。
②プロセスをほめる。
困難な局面でも効果的な打開策を発揮するなど、絶えず最善を考えながら進めていく姿勢をほめます。結果が出ていてもそうでなくても、プロセスの中には多くのほめるポイントがあります。成長がみられるのも、プロセスの中で見えてきます。社員、部下をよく見ることが大切です。
③成果に対してほめる。
出した成果は言うまでもなくほめましょう。そして成果そのものだけではなく、如何に新たな価値を生み出しているのか、成長やこれまでにない資源の深堀をしていきながら、より具体的にほめていきます。この際、質問を使いながら進めるとよいでしょう。「この成果が生まれたのは、どの様に取り組んだからですか?」「どのような点に注意を払っていたから上手くいったのですか?」「これまでにない、どのような新たな取り組みをしましたか?」などです。
話をつづけていきます。
一般的にどこにもある職場の光景です。入社3年目の営業マンAさんは、非常に良い成績を上げています。勢いもあり、営業そのものが天職と感じていて、日々活き活きと仕事しています。一方、Aさんが所属する部署を任されている部長のBさん。Aさんの頑張りはあるものの、部門全体の業績は思わしくなく、Bさんは経営陣から厳しく注意をされています。Aさんの活躍は営業部としても助かるところでもあるのですが、不健全な心理状態にあるBさんにとって、Aさんの勢いのある態度やふるまいが生意気にうつり、最近ではAさんに怒りを覚えることもあります。
この様な状況では、BさんはAさんをほめることなく、逆にやる気をそぐような関わり方になってしまいます。
自分では気づかずに自己中心になりすぎてしまうことが、人間ですからあるでしょう。そういう時は、どうしても素直にほめる事が難しくなってしまいます。つまり、自己中心的な一人称視点なのか、全体最適的な三人称視点なのかで、大きな違いが生まれてきます。
そんな時には、自分の気持ちを思い切って、切り替えることです。仕事への取り組み姿勢やプロセスの中で、このやり方は良かったとほめることで、部下もしっかりと自分の行動を見てもらえていると感じる事が出来ますし、信頼関係が生まれていきます。また、部下の成長や成果に対してほめるところに集中することで、上司の意識の健全性も高まってきます。ほめるという行為は、上司が嬉しいからとか、上司の感情表現ではないのです。もちろん、部下に対して嬉しい気持ちを素直に表すことは大切なことですが、そこには信頼関係が必要不可欠です。まずは、自分の「ほめる基準」を持ちましょう。
最後になりますが、上司の使命は組織全体で最大限に業績を出すことです。部下が成果を上げる事ができるように導く事なのです。その為には、自分の怒りや感情を抑えないといけない場合もあります。しかし、部下が会社の規則などを明らかに逸脱した行動をとってしまう様な時には、怒りの感情を出す事も時には必要なのかもしれません。また、ほめる事が目的になっていては、逆効果になる可能性もあります。叱る時も、ほめる時も、相手のために伝えるという事を念頭に置いていく事です。そうする事で、棘のある言葉や、暴言などを抑えることができますし、ほめるときにも、しっかりと自分の気持ちを部下に伝える事ができる様になるのです。