皆様は、どのような教育方針をもっていますか。特に参考にされているモデルはありますか。振り返ってみれば、自分がまだ新人だったころ、指導してくれた上司の教育スタイルが原点になっているかもしれません。私もしかり、育てていただいた師匠の考え方や価値観などが心の支えになっています。
では、人材育成にとって原理原則とは何でしょうか?
いずれにせよ、世の中には様々な人材育成についての考えがあり、多種多様な方法があります。その企業や人材にあった効果的な方法が大切だと思います。
古くから日本には、現代の人材育成にも通じるのではないかと思えるほどの、指導者が多く存在しています。吉田松陰、渋沢栄一、福澤諭吉などです。なかでも旧大日本帝国海軍連合艦隊司令長官であった「山本五十六」の人材育成論には、現在の人材育成にも通じるところがあります。
山本五十六は戦争に反対をしていた軍人の一人でした。世界の国々の力関係やアメリカの国力と日本の国力の差を十分理解していたため米国との戦争を回避する様に訴えていたのです。 時代の兆しを読めていたリーダーだと思います。
その山本五十六の言葉の中に「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」があります。
この言葉の中には山本五十六の人材育成の原理原則が凝縮されていると思います。まさに、原理原則を自らの姿で語ることです。
現代の人材育成に関連して考えると、例えば「マニュアルなどを読んで、そのとおりにやりなさい!」と言うだけではありません。実践的なお手本をしっかりと観察させて、次に積極的に体験を積み重ねる事こと。この一連の学習が人材を育てる第一歩なのです。
特に、基本を教える際には、五感を使って体感させる事が大切なのです。つまり、頭で理解するまえに体で“コツ”をつかむことです。そして、体験をさせた後は、どうしてこの作業が必要なのか、なぜこれをやるのか、という事を説明するようにしなければ、深く吸収する事はありません。相手に伝わる言葉で、何故必要なのかの意味を理解させる事が成長への近道なのです。
説明して、その作業の大切さが理解出来たら、単独で一度させて見ることです。これは頭の中で理解している事象と実践での溝を埋めることになります。そして実践の跡は、完全にできなくても、より良くなっているところ、成長しているところを承認していきます。
教育や指導をする際に相手を褒めるという行動は、その人の存在そのものを認めているという事につながるので、とても大切な事なのです。
この場合、意見や提案がある部下とはしっかりと話し合い、なぜそのような考えに至ったのかという事を理解することです。また、部下の言葉に耳を傾ける事で、部下の気持ちや人間性を把握する事ができます。
部下の情熱が伝わり承認した後は任せる事です。その事で部下は仕事に対して責任感を持ち成長の道へと進んでいきます。そして、成功した時には大きな喜びと一緒に達成感を感じるのです。その達成感を感じることで部下は大きく成長し、自分から困難な仕事に立ち向かうという様な頼れる人材へと成長していくのです。
最後に、山本五十六は「苦しいことあるだろう、言いたいことあるだろう、不満なこともあるだろう、泣きたいこともあるだろう、これらをじっとこらえてゆくのが男の修行である」と言われています。人を育てることは、自己修練でもあるのです。リーダーが組織や部下の意欲を高めるには、強い絆で結ばれたチームの一員として尊重していくことだと思います。そして、リーダーの一挙手一投足を通して、組織文化を育てていくことです。